メディア解説:NAS:NAS(Network Attached Storage)とは
NASは、Network Attached Storageを省略した呼び方で、文字通りTCP/IPプロトコルで構成されたネットワークに直接接続して使われる補助記憶装置(ファイルサーバ)を指す。一般家庭のWi-Fi(無線LAN)の普及と共に一般化したために、“LAN接続HDD”などの呼び方で市場に登場したため、内部にメインボードやCPUがあって、専用のOSが動作していても、その意識を持たないユーザが少ないのが現実であり、故障の原因として「ユーザの取り扱い上の問題による障害」が多い傾向があるのは、やむを得ないとも言えるのかもしれない。
NASがこのように、短期間で一般的になったのは、2000年代初期にADSLなどのブロードバンドによるインターネット接続のシェアの拡大を狙って新規参入した、某インターネット接続業者が、無償でADSLモデムを配るような拡販キャンペーンと同時に、無線LAN(Wi-Fi)も併せてキャンペーンを行ったため、邪魔なLANケーブルを必要としないで、ノートパソコンをインターネットに接続できる利便性に人気が集ったと共に、HDDの大容量化が進み、パソコン内蔵のHDDの容量不足を感じる頻度が減り、それまで必需品であった「USB接続の外付けHDD」の必要性は薄れたが、その外付けHDDの使用で身近になった「データの外部保存」の一般化が、NASの市場を急速に拡大したと考えられる。それまでのNASのメーカは、DELL 、EMC、HP、IBM、NetApp、Netgear、といった企業向けのサーバを製造する企業が中心で、ほとんどの製品がサーバルームのラックに組み込まれて設置されるようなものばかりであったが、バッファローやアイ・オー・データ、ロジテックに代表される、それまで家庭用パソコンの周辺機メーカとして知られていた企業が、“NAS”の名称を使わずに、一般家庭用向けに“LAN接続のHDD”と理解されやすい名称で発表し、モデムやルータと並べて設置できるようなコンパクトに設計された筐体や、それら製品の価格面の優位性によって、企業向け市場のシェアをも併せて得ることになった。
特に、HDDの大容量化が進んだことによって実現された、4台のHDDを搭載し、最大1TBの記憶容量を実現し、また同時にRAID1としてミラーリングやRAID5として冗長性をもたせる設定も可能にした、バッファロー製の“テラステーション”の登場は、それまで米国でP-NAS(Personal NASまたはPoor mans NAS:貧乏人用のNAS)と揶揄されていた、それらメーカの製品のシェア獲得への大きな転換点で有ったともいえる。
また、同時に企業内のNASの設置場所が、その筐体のコンパクトさを生かして、それまでのサーバルームのラックから、各個別の部署の事務室の本棚や机の下などに気軽に設置し、共用頻度の高いデータファイルやテンプレートファイルの収納などに気軽に活用出来るようになったことも大きな力となったと推定できる。
しかし、それらのメーカの第1世代の製品は、家庭用として設計されていたにも関わらず、実際に購入・使用したユーザが企業の方が多いという不適合もあったため、システムの負荷が過大となり、障害の発生率が高くなってしまう結果を招き、その障害のユーザクレーム対応を目的として、データ復旧業者を利用したシステム管理・販売業者が、データ復旧業者と製造メーカとの間を取り持って、製品の信頼性の向上を目的とした意見交換会の開催や、試作品レベルでのモニター実施などを積極的に行った結果、2世代目以降は故障率の低下を実現、製造メーカも信頼を取り戻すことが出来たという裏話も存在する。
- NAS復旧についてはこちら