vol.8 システムエリア情報って何?
前回の初期診断、HDDの起動シーケンスの中で、SA(システムエリア、サービスエリア、トラックゼロ情報、基本的物理構造情報などと呼ばれます)といった聞きなれない言葉が出てきました。この辺の話になりますと、インターネット上で正しい説明をしているサイトは見つからないのではないかと思います。しかしながら、最近のHDDにおいては、このシステムエリアとファームウェアが非常に大きな役割を果たしており、「これを語らずにHDDを語るな!」とも言えるほど重要になっています。
1.どんな情報?
「基本的物理構造情報」と言ってしまうのが、多分、一番、理解し易いのではないでしょうか。具体的には以下のような内容になります。
注:HDDは、交換する場合に、HDD全体を交換する事になっているので、実際に何をどう使っていても、パソコンなどのシステム側から見て互換性が保証されていれば良いので、内部に対する設計上の規格は存在しません。その為に、以下で説明する情報は、筆者が経験上得る事が出来たものであって、HDDメーカなどから入手したものではない事をお断りしておきます。
1.ハードディスクの仕様に関する情報(型番/シリアルナンバー等)
BIOS画面などで表示される情報の事です。
2.S.M.A.R.T. ハードディスクの自己診断機能情報
おなじみのウィキペディアSelf-Monitoring, Analysis and Reporting Technologyによると、
Self-Monitoring, Analysis and Reporting Technology(セルフモニタリング・アナリシス・アンド・リポーティング・テクノロジー、略称: S.M.A.R.T.(スマート))は、ハードディスクドライブの障害の早期発見・故障の予測を目的としてハードディスクドライブに搭載されている機能である。この機能は、各種の検査項目をリアルタイムに自己診断し、その状態を数値化する。ユーザーはその数値を各種のツール(後述)を用いることで知ることが出来る。全ての故障を予期することは出来ないが、安定した利用環境における経年劣化による故障を知るには非常に有効である。
と説明されている機能を使って診断された情報が、全て記録・蓄積されています。
3.P-List 製造段階で生じた不良セクタに関する情報(リスト)
簡単に言うと、工場で初めて物理フォーマットしたときにバッドセクタとして検出され、置き換え処理が行われたセクタの情報です。
4.G-List 出荷後に生じた不良セクタに関する情報(リスト)
P-Listが製造段階でのバッドセクタに関する情報であるのに対し、こちらは、実際に使い始めてから検出され、予備の場所と置き換え処理が行われたセクタの情報です。ですから、当然のことながら、使用時間が長くなるのにつれて情報量が増加します。
5.ファームウェア情報
ファームウェアに関する情報は、このシステムアエリアに全てが書き込まれているのでは無く、制御基板上のコントロールICのメモリー内にも書き込まれていて、例えば、このシステムアリアが円盤状の何処にあるのか、ヘッドの特性の最適化を行うためのフィルター特性などの、基本的な機能に関する情報は、メモリーに内に存在させないと、円盤上の情報が読めないので、HDDとして機能しないことになってしまいます。
6.ゾーンテーブル
円盤の外周部と内周部では、円周(トラック)の長さが違うので、物理的なセクタの長さが規定された範囲に入るように、トラック上のセクタ数を変えたゾーンと呼ばれる区切りを作って記録密度を管理しているので、その範囲に関する情報です。
7.セキュリティ情報
パスワードや暗号化に関する情報などが記録されています。
ここまで詳しく説明してしまうと、この情報がいかに大切であるか十二分に理解していただけたのではないでしょうか。
2.何処に書いてある?
このシステムエリア情報は、いったい円盤上の何処に書いてあるのでしょうか。今回の説明の初めに、「トラックゼロ情報」とも呼ばれている事を紹介しているように、トラックゼロの位置に書かれています。トラックゼロですから、数年程前までは、ほとんどのメーカのどんな機種でも円盤の最外周でした。しかし、HDDの容量が大きくなるにつれて、HDDのデータへのアクセス速度を上げることを目的にして、全トラックの丁度真ん中辺りに置かれるようになっています。これは、HDDが書き込まれている全てのデータに対して、ランダムにアクセスする事を考えると、アクセス時間の中に於ける、シーク時間(ヘッドを目的のトラックまで移動する時間)を出来るだけ小さくする事が効果的なので、真ん中に置く事によって、シークに必要なトラック数を、見かけ上半分にするためです。
いかがでしょうか?前回の「初期診断」、「起動シーケンス」に合わせて、今回の「システムエリア情報」の内容についてお読みいただくと、HDDを電源につなぎ「起動シーケンス」を動作させると、初期診断が出来てしまうのか、ご理解いただけたのではないでしょうか。