vol.7 進む高密度記録とデータの読み出し方
データサイズが毎年大容量化していくなか、多くの情報を記録したいというニーズは当然ながら増えてきます。そこで、記憶容量を増やすための様々な研究がこれまで進められてきましたが、その方法論には「記録に使われるプラッタの数を増やすか」「記録密度を高めるか」の2つが考えられる方向性です。ただ、プラッタの数を増やすのは、部品点数の増大や消費電力の増大など現実的には厳しい面も。そこでHDDを開発しているベンダが取り組んできたのが高密度記録に向けた試みです。
高密度記録のための方法には、高い保磁力を持つ磁性体の開発など材料面の改良から、ノイズなどの影響で0か1か判断できなくなった場合であっても最も確からしい信号を見つけ出すPRML(Partial Response Maximum Likelihood)法まで、様々な手法が用いられています。そして2005年には、磁気パターン記録の新たな方法が開発されました。それが、従来の水平(長手)磁気記録方式とは異なる、垂直磁気記録方式と呼ばれるものです。
水平磁気記録方式の場合、水平方向に磁性粒子が同じ極同士で向き合って並んでいるため不安定な状態にあり、長期間使用しているとデータが消えてしまう可能もありました。もちろん、年々記録密度が向上されてはいるものの、データ消失という根本的な問題が解消されておらず、高密度記録への不安は残ったままだったのです。そこで新たに登場した垂直磁気記録方式では、磁性層の厚み方向に磁力線を通すことによって、水平から垂直へと記録の方向を変えました。これによって、データを小さくしても熱による喪失の恐れが激減し、高密度な記録が可能となっています。
データの読み出しについても、記録密度を高めるための工夫が施されています。データの読み出しは、磁気の変化で抵抗値が変化する様々な素子を利用して、磁性層に書き込まれた磁気パターンを磁気ヘッドで読み取っています。以前は読み出しと書き込みで同じ磁気ヘッドを利用していましたが、記録密度が高まると磁気が弱くなって読み出しが難しくなるケースも。そこで、外部から加える磁界によって素子の抵抗値が変化するMR (Magneto Resistive)効果を発生する素子を読み取り専用に利用することで、高密度に記録されたデータも読み取りやすくなっています。このMRヘッドには、巨大磁気抵抗効果を利用したGMR(Giant Magneto Resistive)ヘッドやトンネル磁気抵抗効果を利用したTMR(Tunnel Magneto Resistive)などがあります。