vol.5 データを保管するモノとは? 磁気テープ編

2013/02/15

HDDや光ディスク、フラッシュメモリなどは一般的によく知られた補助記憶装置ですが、他にも一般的に企業で利用されている補助記憶装置があります。それが、データのバックアップ時に可搬性のあるメディアとして利用されている「磁気テープ」です。

磁気テープは、脱着可能なリールに巻かれたテープに磁性体を塗布し、テープ表面にデータの書き込みを行います。磁気テープは初期のコンピュータから使われてきた歴史を持っており、その構造によってオープンリール式とカートリッジ式に分けることができます。テープを搬送するための機構部やヘッドなどが装置側に備えられているためにリールの付け替え作業が必要なオープンリール式から、今はテープがすべてカートリッジ内に納められたカードリッジ式が一般的です。

磁気テープの種類は、記録する方式によって「リニアスキャン方式」「ヘリカルスキャン方式」の2つに分けることが可能です。リニアスキャン方式では、テープの長さ方向にデータを記録していくことになり、単純な経路を通過するだけの構造です。リニアスキャン方式を採用しているのは、DLT(Digital Linear Tape)やLTO(Linear Tape-Open)などのテープ規格です。

一方ヘリカルスキャン方式では、VHSビデオデッキと同じように、ドラムを高速回転させながらテープの斜め方向にデータを記録していきます。ヘリカルスキャン方式は、DDS(Digital Data Storage)やAIT(Advanced Intelligent Tape)などに採用されています。もともと耐久性についての優劣が議論されてきましたが、最近ではLTO規格のLTO-3(最新版はLTO-5)などが多く利用されており、方式の違いはさほど問題にならなくなっています。

これらの磁気テープは、現在バックアップ用途などに利用されていますが、HDDのように中心的な補助記憶装置にならなかったのはなぜなのでしょうか。それは、リールに巻かれたテープにデータを記録していくため、データを読み書きするためには、テープの先頭から順番に行う必要があります。ある特定のデータにアクセスしたい場合、テープの先頭かから読み出し、目的の位置までテープを送る必要があります。つまり、ランダムなアクセスが難しく、シーケンシャルなアクセスしかできないためです。そこで、ある一定の間保管しておくバックアップ用途に用いられているというわけです。

ただし、最近はHDDのコストも安価になっており、バックアップ用途としても磁気テープが用いられなくなってきているのが実態です。ただ、可搬性のあるメディアに情報を保管するという意味でも、磁気テープはこれからも使われ続けることでしょう。