初期化したPCやメディアからのデータ復旧は可能?トラブルの原因とお勧めの復旧方法
初期化とは、HDD、USBメモリなどのストレージのフォーマット、PCなどの工場出荷時の状態へのリカバリーの二つの意味で用いられます。
初期化によるデータ消失のトラブルは、フォーマットが原因の場合は比較的データ復旧の成功率が高いものとして知られています。これは、一般的なフォーマット作業では実データを消去しているわけではないという仕組みに由来しています。一方で、OSの再インストールを伴う初期化や、トラブル発生後の対応状況によっては、データ復旧の可能性低下、あるいは不可能になるケースもあるので注意が必要です。
ここでは、初期化の仕組みとデータ復旧の可否について説明すると同時に、メディアやデータによってどのように対応すべきかについても言及していきます。
初期化の種類と、データ復旧が必要となるトラブルの原因
「初期化」が示すふたつの意味と仕組み
パソコンやHDDなどの記録媒体を利用する上で聞くことの多い「初期化」という言葉。この初期化には、二つの異なる意味があります。
1つ目は、HDD(ハードディスクドライブ)、USBメモリ、DVDなどのメディアにデータを記録するために、ファイルの管理方式を決め、その管理方式に基づいて下地を作る作業。2つ目は、PCなどを購入時の初期状態に戻すリカバリーと呼ばれる作業を指しています。
1つ目の初期化、つまりフォーマットは、WindowsのPCだとコンピュータ(もしくはマイコンピュータ)からUSBメモリなどを選択し、右クリックから「フォーマット」を選択、実行する作業のことです。Macだとディスクユーティリティから同様の操作が出来ます。
これは実のところ何をやっているのでしょうか?
少しお勉強的な内容になってしまいますが、できるだけ分かりやすく説明したいと思います。
先述の通り、フォーマットとは「ファイルの管理方式を決め、その管理方式に基づいて下地を作る作業」のことです。PCやスマートフォン、カメラなど、ファイルを扱うシステムは全てプログラムで動作しており、決められた通りにしか動作できませんので、ファイルの扱い方、管理方式を決めてあげる必要があります。
ファイルの扱い方とは、具体的にはファイルの作成、移動、編集、削除、日時管理などの方法のことで、こういったファイルの扱い方を決めた管理方式をファイルシステムと呼びます。
Windowsで使用できるファイルシステムはFAT、exFAT、NTFSなどがあり、ちなみにFATはビル・ゲイツが開発しました。
MacではFAT、exFAT、HFS、HFS+、APFSなどがあります。
WindowsではHFS+を使うことが出来ません。Macで使用していた外付けHDDをWindowsに接続するとフォーマットを促すメッセージが出るのはこのためです。
Macから見ると正常であってもWindowsから見ると認識できないため、Windowsが対応している方法で下地を作り直すようユーザーに表示しているわけです。
管理方式を決めたら、次にファイルを実際に保存するための下地を作成します。
ファイルシステムごとにファイルの管理方法が異なるため、下地の形も異なります。
ここまでやって初めて、フォーマットされた状態になった、と言えます。言い換えれば、ファイルを管理する準備が出来た(下地を作った)、ということです。
次に、2つ目の意味であるリカバリーについてですが、これは購入時(工場出荷時)の状態に戻すという意味での初期化です。PCの調子が悪くなったりウイルスに感染したりする場合などに行われることが多く、HDDやSSDをフォーマットした上でOSや各種アプリケーションを再インストールします。
再インストールに必要な情報は、PCに付属するリカバリーディスクやHDDの一部エリア(リカバリー領域)に記録されていて、それを元にリカバリー作業が行われることになります。
初期化に伴うトラブルはユーザー自身の人為的ミスが原因
初期化してしまった事によるデータのトラブルは、そのほとんどがユーザー自身による操作ミスで発生しています。
◆バックアップ未作成状態でのリカバリー実施
PCの調子が悪くなったりウイルスに感染したりといった場合に、リカバリーによる初期化は割と手軽に行える回復手段と認識されています。
一方で、ユーザーが作成・保存したデータも全て消去されるので、バックアップを作成していない状態でリカバリーを実施してしまうと、そのままデータが消失してしまうことがあります。
◆ミスによる誤フォーマット
フォーマット作業の場合、リカバリー以上に気軽かつ簡単に行うことができます。
そのため、対象となるディスクを間違えてフォーマットしてしまうといった人為的ミスも発生しやすくなっています。
◆デジカメを使ったフォーマット
PCを使ってフォーマットした場合には先述の通り復旧できる可能性が高いのですが、デジカメを使用してフォーマットした場合、全領域のデータを実際に削除してしまうことも多く、この場合には復旧ができません。
最近ではスマートフォンでも同様のケースが見られるため、デジカメやスマートフォンでフォーマットする場合には注意が必要です。
◆誤操作でのリカバリーディスクの作成
Windowsには外付けのHDDやUSBメモリをリカバリーディスクとして設定する機能があり、間違ってこれを実行してしまうケースも多くあります。
外付けHDDをリカバリーディスクとして設定してしまうと、32GBのパーティションが作成され、FATファイルシステムでフォーマットされた後、リカバリー用のデータが書き込まれます。
パーティションの切り直し、フォーマット、上書きが行われるため、復旧できたとしてもファイル名が失われていたり、破損ファイルが多く含まれたりするなど、きれいに復旧されないケースが多くなります。
◆データ破損による強制初期化
メディアの内部が論理的に破損していることが原因で「フォーマットしてください」といった警告が出ることも、初期化関連のトラブルのきっかけになります。
このメッセージは、管理情報が破損しているために適切な形式でデータが管理されていないと判断されたときに、PCに表示されます。
また、USB接続の外付けHDDやSDカードのように都度抜き差しを行うメディアの場合、「安全な取り出し」をせずにメディアを外してしまうことで、こうした管理情報の破損が引き起こされることもあります。
その他に、メディアの中に物理的に読めない領域がある場合にも、フォーマットを促すメッセージが出るケースもあります。
初期化した機器・媒体からの復旧の可能性とやってはいけないこと
誤って初期化してしまったときにやるべきこととやってはいけないこと
誤ってPCなど初期化してしまったときによくやってしまうことには以下のようなものがあります。
- PCを使ってインターネットで対処方法を検索する
- 復旧ソフトをPCにダウンロード、インストールする
- ブラウザやメーラーなど、必要なソフトをインストールする
- 焦って古いバックアップデータを書き戻してしまう
これらは全てやっては"いけない"ことです。
何故かというと、上記は全てデータを上書きする行為だからです。
復旧したいデータが書かれているところに、別のデータを上書きすると、もともと書かれているデータは絶対に復旧できません。
データを復旧したい場合、そのメディアにデータを書き込むということは絶対にやってはいけないことなのです。
データを書き込んでもいいのは、復旧できたと確認できた後です。
それまでは復旧ソフトもバックアップデータも書き込んではいけません。
インターネットで検索しただけではデータは上書きされないのでは?と考える方もいらっしゃると思いますが、インターネットで検索したりページを見たりする際には、データをダウンロードしています。一部のデータはキャッシュとしてPCに保存されますし、閲覧履歴のデータベースも更新されます。こういった処理はすべて上書きになるため、データ復旧の可能性を低くします。
また、同様の理由でメールを送受信することもやってはいけないことです。
誤ってPCなどを初期化してしまったら、まずPCの電源を落としてください。外付けHDDやUSBを初期化してしまった場合にはPCから取り外してください。
そして復旧するために何をすべきかを落ち着いて考え、状況とやることリストを整理してください。
判断に迷ったら、とりあえず復旧業者に質問してみることをお勧めいたします。
復旧ソフトの使い方については後述します。
初期化した機器・媒体からデータ復旧はできるのか?
では、PCやHDDなどを初期化してしまった場合、そこに保管されていたデータは復旧できるのでしょうか。
フォーマットしただけのメディアを復旧した場合、典型的には以下のような形で復旧されます。
- 一番上のフォルダにあったファイル、フォルダ情報は消え、ファイル名を伴った形で復旧されない
- 下層のフォルダ単位でファイルツリーが復旧される
- ファイル名を伴って復旧されないファイルは拡張子単位で復旧される
結果はファイルシステムや使用状況によって異なりますが、ツリー構造でデータを管理しているファイルシステムであればこのような形になることが多くなります。
フォーマット後にOSやアプリケーションの再インストールを行うリカバリーを実施した場合や、フォーマット後に該当メディアを使った作業(ファイル作成、更新など)を行った場合、復旧の可能性はどんどん下がっていきます。これはデータが上書きされていくためです。
先述の通り、上書きされた領域に元々書いてあったデータは復旧出来ません。このため、誤ってフォーマットしてしまった場合には、メディアを使用しないことが非常に重要です。
初期化したPCや各種メディアから安全にデータ復旧を行うためには
パソコンや外付けHDDを初期化してしまった場合
バックアップを取らずにPCをリカバリーしてしまった場合、市販のデータ復旧ソフトを使って自力で復旧を試みるという手もあります。しかし、こうした復旧ソフトの使用にあたっては絶対にやってはいけないことが2つあります。
- 復旧ソフトを復旧対象のPCにダウンロード/インストールすること
- 復旧データを復旧対象のPCに直接保存すること
理由は先述の通り、データの上書きが発生するためです。
1はともかく2はいいのでは?と思われるかもしれませんが、復旧データは破損している可能性があるため、復旧ソフトを使ってはみたがちゃんと復旧できなかったということはよくあることです。
ちゃんと復旧できなかった場合には、ゴミファイルをメディアに上書きしてしまうだけの結果になります。
ではどうすればいいのか?ということですが、外付けHDDやUSBをフォーマットしてしまった場合には、復旧ソフトをPCにダウンロード/インストールしても問題ありません。
PCにインストールし、メディアをスキャンし、別のメディアにファイルを復旧すればOKです。
PCを初期化してしまった場合は、PCからHDDを取り出し、別のPCに接続して復旧ソフトでスキャンします。
復旧ソフトは当然別のPCにダウンロード/インストールします。
この作業を行うのが難しい場合、またはデータの上書きが心配などの場合には復旧業者にご相談ください。
物理障害が無い復旧案件の場合、あまり高額にならないことが普通ですので、復旧業者に任せたほうがトータルのコストで見れば安く済むことも多くあります。
消失したことに動揺して焦ってしまうほどの大切なデータだからこそ、いったん落ち着いて、信頼できる相手に相談するようにしましょう。
USBメモリやSDカードなどで初期化トラブルが起きた場合
USBメモリやSDカードなどの都度入れ替えて使うメディアでは、挿入時に「フォーマットしてください」という警告が出て、その場で初期化してしまうケースも多くあります。
このような警告が出た場合は、反射的に初期化してしまわないようにすることが大切です。他の機器につないだら中身を確認できるケースもありますので、まずは落ち着いて他の機器に接続して確認してみましょう。
他の機器でも同様のメッセージが表示される場合は、復旧ソフトを試すのも有効な手段です。
フォーマットを促すメッセージは、ファイルシステム情報がおかしくなっているのでもう一度下地を作り直してください、という意味のメッセージです。
フォーマットのメッセージの原因が論理的な破損である場合には、復旧ソフトで復旧できる場合もあります。
ただしあくまで自己責任ですので、心配な場合は専門のデータ復旧業者に相談するのがお勧めです。
ビデオカメラやHDDレコーダーなどで初期化トラブルが起きた場合
初期化が必要な記憶メディアを使うのは、何もパソコンだけではありません。ビデオカメラやHDDレコーダーなどのいわゆる家電においても、HDDやSDカード、ブルーレイディスクといった記憶メディアが使われています。
そして、当然ながらこれらの記憶メディアの使用にあたっても初期化は必要になり、ファイルシステムがパソコンと異なるケースもあります。
そのため、例えば普段はパソコンで使っているSDカードを間違ってビデオカメラに入れたりすると、フォーマットを促すメッセージが表示されることもあります。ここで初期化してしまうと、元のデータが読み取れなくなってしまいます。
これらの家電における初期化トラブルの場合、そのフォーマットタイプがメーカーや機器ごとに異なるという問題があります。そのため、市販のデータ復旧ソフトでは対応できない場合も多く、専門のデータ復旧業者に問い合わせてみるのがお勧めです。
その場合でも、他のケースと同様に余計な操作をしないことが、復旧の可能性を高めるために大切です。
データ復旧の難易度や重要度が高いケースでは迷わず専門業者に相談を
初期化の後に作業をしたり復旧ソフトの使用で失敗した場合
ここまでにも述べているとおり、ただフォーマットをしただけであれば、完全では無いにしてもデータを復旧できる可能性はそれなりに高いと言えます。
一方で、フォーマット後に新しいデータを保存したり、リカバリー作業によりOSやアプリケーションをインストールしたりする場合、あるいはデータ復旧ソフトを使って復旧を試みて失敗したような場合は、状況が大きく変わってきてしまいます。
一般的なフォーマット作業では、ファイルの管理情報を削除し、実データ部分は残されます。しかし、どの管理情報にも割り当てられていない領域には新しいデータを保存することができます。そのため、初期化の後に作業を行うと、元のデータが上書きされてしまう可能性が非常に高くなり、それに伴ってデータ復旧の可能性はどんどん低くなります。
ただし可能性が0になるわけではありません。
専門的なスキルとノウハウおよび設備を持ったデータ復旧業者であれば、自力では復旧できないようなデータを復旧できる可能性は残されています。初期診断は無料でできる業者がほとんどですので、諦めずにまずは相談してみましょう。
機密情報や重要なデータを復旧したい場合
初期化トラブルからのデータ復旧においては、そこまで難易度が高くないという側面から、自力での復旧を試みるケースが少なくありません。また、それほど専門的でない復旧業者であっても対応しやすいケースだと言えるでしょう。
しかし、企業で取り扱う機密情報や重要なデータを復旧したい場合は、その扱いにも慎重になる必要があります。
データの重要性を考えると、自己責任で市販のデータ復旧ソフトを使うのは非常に危険です。失敗によりデータ復旧の可能性を下げるリスクがあるため、やはり専門業者に相談して安全性を確保すべきでしょう。
次に、専門業者に相談するにあたっては、セキュリティ体制にも留意すべきです。アドバンスデザインでは、クライアントの機密情報を適切に取り扱うためにISO27001の認証を取得しています。また、復旧品質を担保するためにISO9001の認証も取得しています。第三者機関による客観的な保証により、セキュリティ・品質面での安心を確保しています。
機密情報を含むメディアを預ける以上は、こうした信頼できる指標により業者を選定することが重要です。
アドバンスデザインでは、パソコンや外付けHDD、USBメモリなど、さまざまな機器のデータを高精度で復旧いたします。大事なデータを初期化してしまったときは、むやみにいじらず早急にアドバンスデザインの「データ復旧サービス」までご相談下さい。
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